最終章(前編)

 

全てに決着をつけるため、

そしてセシルたちを救うため、シオン達は

アレクディアスの元へと急ぐ。

 

その行く手に突如現れた”モノ”。

それはデュアルブレードだった。

 

その剣は、シオンたちをアレクディアスの元へと導いた。

 

決戦の間…。

そこは、何も無い”無の世界”だった。

 

『ようこそ、マキシムの血を引き継ぐものよ。』

シオンたちの頭に直接響いてくる。

 

「誰だ……!?」

『すべての神の頂点に立つ神……アレクディアスだ。』

「アレクディアス…。」

シオンはデュアルブレードを握り締める。

 

「さっそくだが、セシルたちを返してもらおうか。」

『セシル…?そんな人間はもういない。』

『今は一人の神として生まれ変わったのだ。』

『あいつは、自分の意志で神になる道を選んだ。』

『”力が欲しい…。”その思いがデュアルブレードと
 共鳴したのだろう。』

 

「なんで、俺たちに神を倒せる力を与えたんだ?」

「神を倒す力を与えなければ、俺たちが”今”この場で
 お前に対抗しなかったんだぞ?」

『対抗……?』

『あいつも同じことを言っていたな。』

「あいつ?」

『…確かに、お前たちの力を
 見くびりすぎていたのかもしれない。』

『我の前でも、デュアルブレードは
 お前にかなり共鳴している…。
 普通の人間にはありえない事だ。』

 

『さすがは次の神…ということか。』

 

「え…?」

『人間で、それほどの波動を生み出す事が出来る…。
 やはり、マキシムの力が長年の間、育ったという事か?』

「な、なんのことなんだ?」

『お前が次の絶対神になるのだ。シオン。』

「!?」

『マキシム……彼は私の生み出した精神が
 生まれた人間に付加されたものだったのだ。
 セシルやナキがエリーヌの波動を取りこんだようにな。』

『もともと、我の波動を受け止められる
 人間の誕生を待ったのだが…。』

『その前に、恐怖や破壊、殺戮や混乱の他に
 愛や希望などを司る神を作らねばならなかった。』

『…が、我の意志に反し、その子供は生まれてしまった。』

『なぜなら、ディオスたち恐怖の神を生み出すもっと以前に
 その子供の誕生を望んでいたからだ。』

『その血を引き継いだもの……つまりはシオン、お前だな。
 …正確には血ではなく、精神波動なのだが。』

『肉体は滅びても、精神は年を重ね、育ってきた。』

『その時間の中で、さまざまな”思い出”が
 精神をさらに強くしていった。』

『出会い、別れ、愛、友情……。』

『それぞれが、それぞれの生き方により
 さまざまな波動が生まれ、そして育つ。』

『そして、今、シオンという人間が我の前に立つという
 結果を生み出した。』

『我の望んだとおりだ…。』

「なにを望んだって言うんだよ!」

『………。』

「なぜ、答えない!」

『お前に我の気持ちは分かるまい。』

「……そうかよ。」

『しかし…その結果の前の全ての出来事は
 我が偶然を装って進めていたのだよ。』

「?」 

『マキシムが地上に現れてから、我は、さまざまな
 試練を彼に与えた。』

『アイリスを使い、旅に出るように仕向けたり
 ディオスたちに無意味な殺傷をさせたりな。』

「まさか…、第一次虚空島戦没でセレナだけが
 波動で死んだのも…。」

『それのおかげで、マキシムの精神波動が
 より強いものと成長した。』

『あの時の波動は、我の感じた事の無いくらい
 すばらしく悲しみに満ちた波動であった。』

「マキシムがパーセライトに島の落下を防いだ時に
 デュアルブレードが力を貸したのも…。」

『今後転生するエリーヌ(ルフィア)が
 再び愛する人(の精神波動)を求めるためだ。』

「第二次虚空島戦没で少年の意志に反して
 デュアルブレードが共鳴し、ルフィアの体を引き裂いたのも…!」

『ルフィアには愛する人に殺される辛さを教え、
 少年には愛する人が死ぬ辛さを教えた。』

『むろん、ルフィアの転生も我の力だ。』

「…セシルやナキさんがエリーヌとして生まれ変わったのも…。」

『それは違う。』

『あの二人の思いがデュアルブレードに共鳴、
 今まで生きた記憶の中で、一番強い力を持った
 エリーヌとして、生まれたのだろう。』

『我は長い間、デュアルブレードを使っていたが、
 他に我の意志に反してキッカケが生まれたのは
 マキシムが生まれた時期くらいなものだ。』

「お前は……」

「お前は、ただそれだけの為に
 俺たちを弄んだのか!?」

『遊んでいたのではない。
 地上をおさめるモノとして当然で
 当たり前の事をしただけだ。』

「ふざけるな!」

「俺たちがどれだけ辛い思いを
 してきたと思っているんだ!」

『…言いたいことがあるのなら、
 力で伝えてみよ。』

「なんだと…?」

『……我は正式なデュアルブレードの共鳴者。』

「!?」

シオンの手にあったデュアルブレードが
激しい共鳴を起こす。

『長い間、デュアルブレードは我に共鳴していた。』

『デュアルブレードは、その時一番強い波動を放つ者に
 共鳴し、その力を増幅してくれる…。』

『この剣が我に共鳴する限り、
 お前たちに勝ちはない。』

「やってみなければ分からない!」

シオンの波動が膨れ上がる。

その瞬間、デュアルブレードの共鳴が

一瞬シオンに共鳴したかのように見えた。

『………。』

が、すぐに大きな波が小さな波をかき消すように

再びアレクディアス特有の波動に消され、共鳴を続けた。

「くそぅ……!」

『…………。』

次の瞬間、アレクディアスは耳を疑うようなことを言った。

『わかった…。
 お前たちが言う、セシルを返そう。』

「?」

『お前の波動は、我の元にある
 デュアルブレードを共鳴させることがある。』

『これなら、もしかして……。』

「………?」

『…最後の抵抗をしてみろ。
 お前たちのしていることが正しいのならば、
 デュアルブレードで我を倒せるはずだ。』

『所詮、我の掌で躍らされていた事に
 気付いていたか、いないかのどちらかでしかないのだ。』

『その事に気付くだろう…。』

「そんなこと信じない!」

『ならば、その剣で”否定”してみろ。』

「なぜ、力で証明しなければいけないんだ!」

『………。』

長い沈黙…後。

『……戦う決心がついたら、
 その剣と共にまた来るがいい。』

その言葉と共に気配を消すアレクディアス。

 

後に残ったのは、シオンたちと

…デュアルブレードだった。

 

「………。」

「どうするんだ、シオン?」

「決まっているだろう。
 アレクディアスと戦う。」

(確かに、俺に神と戦えるほどの力が
 あるとは思わなかった…。
 けど、なぜ、俺にデュアルブレードを残した?
 もし俺が共鳴を起こしたらどうする?
 正式な共鳴者になったらどうするつもりだ?
 なぜ、可能性を残す事をするんだ?)

「勝算はあるの?」

「わからない…。
 けど、こっちにこの剣があれば
 何とかなりそうな気がする。」

「そうか…。」

「努力すれば出来ない事はないさ。」

「…よっぽどの世間知らずかバカね。」

懐かしい声。

「セシル!」

「シオン…。」

ずっと、会いたかった少女がそこにいた。

やっと…やっと会う事が出来た。

「セシル…。」

「ずっと一緒にいられるの?」

「あぁ…。もちろんだ。」

 

そして、再び地上に立つ事が出来た。

ようやく、二人は同じ立場として会う事が出来たのだ。

孤独に押しつぶされそうな日や

自分を見失ってさまよう事も無いだろう。

目を閉じていつも見てた風景のように

君は笑って側にいてくれた。

(あと・・・どれくらいだろう?
 そばに居てくれるのは。)

そう思いながら時を刻んでいた。

その日々は、着々とシオンの波動を高めていった。

 

そして、シオンの波動は、デュアルブレードに完全に共鳴した。

悔しいが、アレクディアスの言うとおり、様々な試練があったから

余計にセシルに対する愛が深まった。

そして、今まで仲間と生きてきた”思い出”で育った波動…。

その波動がデュアルブレードに共鳴する。

デュアルブレードはシオンを正式な共鳴者として

シオンの手に戻ってきた。

 

『……もう止める事は出来ない。
 どちらかが……死ぬまで、
 決着はつかない。』

 

―――そしてアレクディアスとの決戦の日。

シオンはデュアルブレードを天高く掲げ、

アレクディアスの待つ空間へと移動した。

アレクディアスは不思議と穏やかな波動で出迎えた。

それはシオンも同じだった。

 

―――正式な共鳴者はシオンになった。

すなわち、波動の力もシオンが勝り、

デュアルブレードの力もこちら側にあるというわけだ。

それに加えて、セシル(ルフィア)の魔力。そして仲間。




アレクディアスを倒した。

この勝利は、シオンが今まで生きてきたからこそ

そして、シオンだからこそ作り上げたものだった。

 

<→負けた場合>

 

彼が消える時、微笑んでいたようにすら見えた。

まるで、こうなる事を望んでいたように…。

 

そして、地上から束縛された波動は消え去った。

 

盛大なパーティーの後

リリーたちとも別れを告げた。

戦いの旅は終わった。

これから仲間たちは、自分の力で

自らの道を切り開いて生きていくのだろう。

 

―――全ての戦いが終わった後、

俺は一人、生まれ育った町へと戻った。

その間、これまでの旅を思い返していた。

 

沈みかけた太陽が生まれ育った町を照らしている。

全てが黄金色に包まれ、目に入ってくる景色は

全て懐かしいものばかり。

家も、木も、道も、空気も、空も……。

全て見たことがある風景だった。

 

「………。」

一人の少女がシオンの前に立った。

 

恐ろしいほどの静寂だった。

風の音や、木のざわめきすら、なにも聞こえない。

 

俺は、デュアルブレードを少女に向けた。

 

―――本当のキミは、何を思っているの?

大切の人はもう…。

 

生まれ育った町の真中で―――

シオンとセシルは対峙していた。

 

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