第二章

 

(もっと強かったら 何も……誰も
 傷つかなくてよかったのにね……)

 

セシルは自らの意志でオルクス・カーディナルにきた。
シオンはセシルがイリスに洗脳されたと誤解したが、実は違う。
生きる為に必要な力…それが今のセシルには必要だった。
薄々気づいてきた自分の存在の意味と役割を。

・・・そしてもう一人の自分の過去を・・・。 

ただ、今は生きたかった。

 

「生きる為に戦う・・・ただそれだけよ。」 

 

セシルはデュアルブレードを握り締めた。

「…あなたは何で、あたしに共鳴するの?
 あなたがいなければ楽になれたのに……。」

 

なぜ伝説の剣がオルクス・カーディナルにあるのか?

OPERATIONS DOOM』とは……?

―――その答えもわからぬまま、二つの組織が対立する。

 

オルクス・カーディナル内部に潜入したシオンパーティ。 

イリスに負けてから、そんなに時間は経っていない。
しかし、セシルを救うのに考えている時間は無かった。

 

イリス 対 シオンパーティ。
―――イリスに勝利。しかし……。

勝利に喜ぶはずなのだが、なにか腑に落ちない
モノを感じた。

(前と戦った時に比べられないくらい
 波動が弱くなっている……?
 むしろ、わざと負けたような……。)

 

「ふふふ……。」

『……なにが、おかしい。』

「人間は、やはり弱くなった……。
 デュアルブレードの力に打ち勝つことが
 出来なかったのだから。」

『?』

「デュアルブレード……そして
 マキシムの血、波動に頼りすぎた結末だな。」

『何言ってやがる。 俺達は、お前に勝った。
 マキシムの血はセシルが引き継いでいるんだろ?
 俺達は、俺達の力で勝ったんじゃねーかよ!』

「いくら、自らの力で運命を変えていたつもりでも
 それさえも運命だということに気づいていない……。
 そう……貴方が私を倒すことも運命だったのよ。」

『どういうことだ!』

「すぐに分かるときが来るわ……。」

そのとき、場の空気が一変した。

 

「さぁ……エリーヌ様の降臨よ。」

目の前に突如現われた”モノ”……。
それは……。

 

『セシル……!!!!!!』

紛れも無くセシルだった。
しかし……。

(なんだ…?この波動は!?)
今まで感じたことの無い強い波動だった。
明らかにセシルのそれとは異質な感じがした。

 

「さぁ……OPERATIONS DOOMの始まりよ。」

イリスの残留波動がセシルに流れ込む!

 

『!?』

セシルの波動が、さらに強くなる。
その波動を感じ取ろうとするだけで
全てが破壊されるようなモノを感じる。

「くっ……!!」

『ユウ!』

ユウはその波動だけで意識を失った。

「シオン!ヤバイぞ!
 この波動は危険過ぎる!!」

俺の中で何かに危険を感じていた。
一刻も早くこの場を離れないと……

(死んでしまう……!)

「シオン!」

「シオン様!」

『あぁ!ミシェル!!
 スイングだ!』

 

「シ…オン……。」

『セシル!?』

その一言でその場にいる全ての人間の行動を止めてしまった。
危険な波動を放出している目の前の”モノ”だが、
その声はセシルのものだった。

「私を切って……。」

『!?』

「今、私の意志でデュアルブレードを
 貴方に共鳴するようにしているわ…。
 それで……私を切って。」

『デュアルブレードで、お前を切る?』

「やるなら今しかない。」

『何言ってやがる!!』

「お願い…。はやくしないと、全てが終わってしまう…!
 全て無駄になってしまうわ!」

『そんなこと……!』
できない……・と言おうとした時だった。

ヴォォォォ……ン

デュアルブレードがシオンに共鳴した。

『!?』

シオンに、戦う意志など無い。
まして、デュアルブレードを手に入れる意志も無い。

ただ、”セシルを救う…。”
その思いだけだった。

そう思うほど、デュアルブレードの共鳴は大きくなる。
まるで、100年前の第二次虚空島戦没と同じであった。

シオンは一つの責任を負う事になる。

 

「俺が・・・エリーヌを殺さなければならないのか?」

 

―――エリーヌは他の神を再生する力を持っている。 

よって、最終的に、エリーヌを倒さねばこの戦いに終わりは無いと言うことだ。

しかし、エリーヌを殺す・・・
それはセシルの死を意味していた。

 

―――それが、デュアルブレードに選ばれた者の宿命だった。

 

『なんで、俺に共鳴するんだ!?』

デュアルブレードは明らかにシオンに共鳴していた。
マーティスが言うには、たしかマキシムの子孫はセシルのはず……。
なのに、なんで俺なんかとデュアルブレードが共鳴を起こす!?

しかし、その考えを目の前で起こっている現実が否定した。 

 

伝説では、100年前デュアルブレードが共鳴を起こしたのは
マキシムの子孫であった。

デュアルブレードは、セシルにも共鳴した。
俺も、セシルもマキシムの精神波動を受け継いだとでも言うのか?

それとも、マキシムと似た波動では無く、
別の何かに共鳴したとでもいうのか?

 

『…………。』
シオンは静かに共鳴するデュアルブレードを握り締めた。

波動が体を貫くようだ…。
さすがは波動を増幅させる剣というわけか。

…が、今は何の波動を増幅しているんだろう?

殺意?これは違う。俺は目の前の敵と戦う意志は無い。
敵…?そもそも敵じゃない。今まで一緒に戦ってきた仲間のはずだ…!

 

(違うはずなのに…。なぜ俺はこの剣を手にした?)

 

わからない…。何も分からない……。

―――始めて触るその剣は、なぜか、懐かしい感じがした。

「さぁ……はやく……!」

『できるわけないだろ!
 なんで今まで一緒にいた奴を
 俺の手で殺さないとならないんだよ!!』

「いい……?
 ルフィアを切った少年もウェインも
 私の存在そのものを消そうとしなかったから
 私は転生して、今ここに存在しているのよ!!!」

『ルフィア?ウェイン?
 誰だよ、そいつ等は!?』

「残留波動も完全に消すには、デュアルブレードを持った者が
 意志を持って私を切るしかないのよ・・・。」

「今、貴方が私を切らなければ
 貴方の子孫が、今の貴方と同じ思いをすることになる!」

「貴方は、今生きているものだけを救えれば満足なの……?
 一時期の平和のために、その後の犠牲にするっていうの!?」

「チャンスは今しかない!」

「もう、辛い思いはしたくない……。」

「シオン、お願いだから、私を……!」

『う……
 うわあああああああああぁぁぁぁぁっ!!!!!』

 俺は……全てを消し去る思いで
その剣をセシルの…いや、エリーヌの身体を
切りつけた。



エリーヌは倒した。

デュアルブレードにより殺戮の神を消し去った。
そして…その剣は、共鳴した者の愛する人を、再び殺してしまった。
デュアルブレードによる悲劇の別れも、これで最後だった。

 

エリーヌはいない。
これで、もしディオス達が復活していたとしても、
倒せば全ては終わる。

 

「全ては終わったんだ…。」
セシルの血に塗れた顔を拭いながら
シオンは、そう呟いた……。

 

セシルとの出会いから始まって
セシルとの別れでこの旅も終わりを迎えた。 

 

そして――― 英雄が消えた。

 

〜第一部 完〜

 

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