戦争に対する心構え
兵法=戦略とは、非常時の非情の法です。とてつもない効果を得られるでしょうが、道を持たない者が乱用すると旧共産圏のような事になります。戦略を突き詰めると、目的のためならどんな手段でも許される・・これでは一瞬の勝利を得られるでしょうが、維持することは恐ろしく困難な諸刃の剣です。この事を解った上で読み進めてください。
戦争に対する心構え

戦争は究極の破壊行動なので、負けてしまえば全てを失いかねない。また、勝ったとしても自分もボロボロになってしまうかもしれない。だから戦争は、為政者達の単純な欲や、単純な勝ち負けだけで計っていてはなかなか割に合う物では無い、戦う前に目的に見合う物かどうか、よく考えて戦いを選択する必要が有ります。
条件が合えば戦い、合わなければ戦ってはいけない。ほかの道を探すべきです。
国の指導者達はその国に住む国民に対して大きな責任が有り、大義(目的・ミッション)を達成するため、将来の行方を考慮して開戦するべきか、外交で他国に仲介を頼んだり、降伏を含めた直接交渉などの選択肢を戦略的に選んで行く必要性が有るのです。
一応、このように書きましたが、全てが理詰めのみによって生まれる訳ではありません。
戦いが起こる場の最初のきっかけは、色んな利害がくっついて、好悪など人の感情から始まる訳です。
結局の所、人間が関与していると言うことですが、一旦、
戦いを決断してしまえば、徹底的な理詰めの戦いが必要になります。
戦争の行方を占う五つの条件と、七つの検討項目
下文の五つの条件で、敵と自分の双方を見比べてみて、戦いの要点を掴む
| 孫子 | 検討条件 | 現代に当てはめて | 説明 |
|---|---|---|---|
| 道とは、民をして上と意を同じくし、故に以てこれと死すべく、 以てこれと生くるべく、民 詭(いつわ)れざるなり |
道 |
政治 | 道について 道とは、まつりごとの事。 |
| 天とは、陰陽、寒暑、時制なり。 | 天の時 | 気象条件 | 天について 天とは、気象の陰陽昼夜、天候、気象、寒暑、四季などの対となる陰陽の自然条件 陰陽について |
| 地とは、遠近、険易、広狭、死生なり。 | 地の利 | 地形要素 | 遠近、険易、広狭、死生について
|
| 將とは、智、信、仁、勇、厳なり。 | 將 | 指揮官の資質 | 智、信、仁、勇、厳が整っているか?
将軍(現場責任者)の資質を計っています。 |
| 法とは、曲制、管道、主用なり。 | 法 | 組織はルールを守ってる? | 法について。 法とは、部隊編成、指揮系統、補給物資などの管理運用方法。 組織を作ってもそれを運用できなければ、タダの烏合の集団になっちゃいます。 |
上の5つは戦いにとって大変重要な要素で、できるだけの情報を集め、敵味方を比べてみなけれはならないのです。
また、現場指揮官である将軍で常勝の名将と呼ばれる人が居ますが、上記のことを理解していれば、少なくともわざわざ負けることが解った戦闘を行わないので、負ける事は有りません。逆に勝てるのが解っている戦闘だけを選択するのですから常に勝ち続けるのです。
| 孫子 | 検討条件 | 現代に当てはめて | 説明 |
|---|---|---|---|
| 主、孰(いず)れか有道なる |
君主の政治力 |
最高責任者 | 君主とは最終的な意思決定をくだす、最高責任者の事です。 現代でもあまり笑えない話です。 |
| 將、孰(いず)れか有能なる | 将の有能さ | 現場指揮官の能力 | 現場の専門家である指揮官が、現場でどれぐらいの知識や経験を生かす力を持っているか?
|
| 天地、孰れか得たる | 天地の条件 | 地形と天候の条件が有利なのはどちらか? | 戦場の地理や天候などの指揮や移動、戦闘に関わる諸条件についての比較。 現代でも、スーパーなどの小売店を見れば、各メーカーがいかに有利な条件を取るかで熾烈な争いをしています。 |
| 法令、孰れか行われる | 法令の徹底 | きちんとルールを守っているか? | 個人プレーが生きるような小さな戦場ではなく、大人数で戦う大戦場の場合、バラバラの個人プレーでは、組織戦には歯が立ちません。 また、ちゃんと法令が守られている組織は、組織末端まで法が浸透していて、一人一人が成すべき事を知っています。 ※勿論弱点もあります。保守的になりがちな安定期には、法が予測する想定外の事が起こると、とたんに脆い面が現れます。 |
| 兵衆、孰れか強き | 兵衆 | 軍事力の比較 | 実戦に必要な、兵隊・装備の動員力と規模についての比較。 どんな奇策奇手を使って一時的に勝利しても、正攻法の部分が無ければ、勝利を維持する事が出来ません。 作戦に必要な量・質・モノ・補給体勢を用意できるかは非常に重要。 |
| 士卒、孰れか練(ね)れたる | 士卒 | 訓練度 | 普段の訓練で有事に力を発揮できるかどうか? パソコンは良い例で、事務所に置いてあってもビジネスに有効なソフトを使いこなせなければ、邪魔なだけになります。 |
| 賞罰、孰れか明らかなる | 賞罰 | 人を動かすコツ | 理不尽な罰や虐めは無いか?・依怙贔屓のような報償は無いか? 何のために一兵卒が闘うかと言えば、国・家族を守る為では無い場合、個人への報償を目当てに闘っています。 |
ここのくだりは、解釈の方法が分かれていますが、要は、将軍(現場責任者)が戦略の基本を理解せずに、勝敗の予想も立てられないまま戦いを始めたのでは、勝つ物も勝てなくなるので、まともにモノが見える将軍(現場責任者)を選んだ方が良いですよって事です。
戦争だけでなく。現代風に見ると、会社の経営者と現場との関係がこれに当たるでしょう。情勢判断ができない方なら、ドリフのコントじゃないですが「ダメだこりゃ、次行ってみよう」って感じです。
物事の本質の部分を掴めれば、どんな場面でも臨機応変に対処出来る事を言っています。
また、孫子ではこの勢を大変重用視している。これについては第5篇.勢篇で詳しく述べています。
戦いの主導権を奪え
この詭道・・つまり策術といったものを巧く使えば、少ない兵力で大きな兵力の相手を倒すことさえ可能。
・・ て言うか、少ない兵力の方は、まともに正面から向かったのでは、到底勝ち目は無い。極まれに神風が吹いて勝ってしまう場合も有る事は有るが、いつでもそんな偶然が起こる訳はなく、基本の部分が改善されなければいずれ倒されてしまいます。
・・兵とは詭道なり・・は、まさに戦争の本質を突いた言葉です。
戦争が始まる前から騙し合いが行われています。それは日常・普通の生活の中では、ずるいとか、汚いといったことです。
でもそれが戦争です。
「そんな事してでも勝ちたいか!」と、言われても勝ちたい、勝たなければならないのが戦争なのです。
故に
実なればこれに備え| 孫子 | 説明 |
|---|---|
| 能なるもこれに不能を示し |
目的を実行する能力が有っても、無いかのように見せ |
| 用なるもこれに不用を示し | そこに用が有っても、無いかのように見せ、 |
近くともこれに遠きを示し 遠くともこれに近きを示し |
近くても遠くに居るかのように見せ、遠くても近くに居るかの様に見せ |
| 利なればこれを誘い | 相手が貪欲なら、利益をちらつかせて誘い込み |
| 乱なればこれを取り | 相手が乱れたら、そこを突いて |
| 実なればこれに備え | 相手に実力が有れば、これに備えて |
| 強なればこれを避け | 明らかに敵の方が強ければ、真正面からの戦いは避けて |
| 怒なればこれを挑し | 怒りっぽい相手なら挑発して(正常な判断を妨げる) |
| 卑なればこれを驕らせ | 尊大な相手なら驕り高ぶらせ |
| 佚なればこれを労し | 相手が元気満々なら疲れさせ |
| 親なればこれを離し | 相手の同盟者や仲間との間が親しければ、仲を離れさせる |
上の基本から、相手の情報を分析し、相手の条件や性格等に合った計略を立てれば、相手を計略の落とし穴に誘い込む事が出来る。
これらの策を用いて相手のコントロールに成功したら次に↓
勝負の要点、相手の虚を突く。
相手が準備してない所だと、簡単に叩く事ができる。これを繰り返して、混乱させてやれば、戦いの主導権を握れる。
いかに相手が予想して準備した作戦の裏をかくか、このポイントを押さえていれば、多少の数の違いでも戦力差をひっくり返す事が多々あります。
自分の思った通りに相手を動かす事が出来たら、後は簡単に相手を倒す事が出来る。
この事から、相手を騙し自分のコントロール下に置く為には、絶対に相手に騙されている事を悟られてはいけない。
その為には、策略は例え味方にもその時が来るまで漏らしてはいけない重要機密、と言う事なのです。
戦闘前にしっかりと情報を集め、勝敗への計算をする
戦う前にこの計篇に示された条件を考慮することで、勝敗の予想を建てられます。
しっかりと計算できないのに、戦いを起こすのはどうかなと言ってます。
こんな感じですが、勝てない事が解った場合は、いかに戦いを避けるかを考えなきゃね、ってことでしょうか。
例外として、大局を見渡し、それが国(組織)の志に合った結果に繋がったり、または全体の勝利への要点だったりと、どうしても戦わないといけない局面・要所が生まれる事が有ります。
その際、通常では勝てない相手なのですから、極端な奇策を用いたり、トンでもない犠牲を払ってでも戦わなければいけないことも有ります。
その一点さえ突破すれば全体の勝利へ繋がる確信がある場合や、又は、後々の為に罠を仕掛けるための敗戦など、色々な局面が有り、これらを瞬時に判断して決断する責任が決定者にはあります。
国(組織)の最高責任者は、以上の覚悟を以て国家の舵取りを決断していかなければいけないのです。